今週、メールマガジンで最も多く読まれたのは韓国で海外旅行需要が急速に増加しているという話題でした。韓国は、2019年の人口が5178万人であったのに対して出国者数が2871万人に上った海外旅行大国ですので、ひとたび往来再開が可能になれば鬱積した需要が爆発しても不思議ではありません。

この出国率は、日本の人口で雑に計算すると出国者数が約6950万人に達するもので、そう考えるとその規模が感じられます。日本でもその半分とは言わずとも、せめて20%くらいまで上がってくれると良いのですが、今後も無理でしょうか(2019年は15.3%で、東京は30.1%と高いものの、それ以外の道府県では神奈川を除いて20%を超えるところはありません)。今後のインバウンドの復興、再成長を考えればより多くの日本国民が自ら異国での旅行を実体験し「おもてなし」をブラッシュアップすることが大切で、その意味で今後のパスポート保有率、出国率の上昇は国家的課題と言えます。

さて、その韓国はというと日本から最も近い外国であり、歴史的にも関わりが深いため粗が見えやすかったりして対立構造が目立ちがちな国であり、ネット上では「アンチ」も多いわけですが、ある意味でそれは地理的にも歴史的にも近いがゆえ、つまり兄弟喧嘩のように関係が濃いために火種も多くなるという話であると考えます。

もちろん、彼の国に大切な友人もいて概ね好意的な立場を取る私から見ても、政府間合意を反故にするなど受け入れがたく理解できない部分があるのは事実です。しかし、好むと好まざるとにかかわらず過去から続くそうした距離感は今後も変わらないわけで、旅行業界としてはアウトバウンド/インバウンドともに重要な相手国として粛々と安定した関係を維持していくことになります。

逆に「重要な相手国」でなくなるケースを想像すると、どちらか、あるいは両方の国が極端なゼノフォビアに走るようなケースが考えられますが、そんな世の中になったら旅行業界自体がとんでもないダメージを受けるわけで、やはりこの業界で働く我々は平和産業の一員として、数年単位でのアップダウンは折り込みつつも関係の安定を希求する必要があります。

ちなみに、韓国というと今やK-POPや映画などが世界で評価されるコンテンツ大国ですが、日本でもNetflixなどで現地製作のドラマが人気を博しているほか、最近は漫画でも現地の作品が(場合によっては日本的な人物や土地の名前に書き換えて)読者を集めている例も増えています。そういったものを含めて有形無形の文化的交流は変わらず盛んですので、一部では不穏さがあっても、全体としてエスカレートしていくことはないだろうと予測しています。

なお、近場の海外という観点では、今週はグアムのワクチンツーリズムの枠組みが決まったという記事もアクセスを集めました。滞在先の宿泊施設に缶詰になるようで、「AirV&V(ワクチン&バケーション)」のバケーション要素が感じられない気もしますが、本土に行かずとも米国の規制をクリアしたワクチンを接種できるというのは結構な可能性を秘めているように思います。(松本)

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